ピレリCN36 +アルフェッタ1800GT(弊社から通販で販売)
- 車種
- アルフェッタ1800GT
- 新規購入タイヤ
- ピレリ・CN36 185/70VR14
- 交換前タイヤ
- ミシュラン・エナジーセイバー+ 185/70R14
このタイヤの感想
先ずは、ホイール到着後すぐに組み替え、また丁寧な梱包で発送していただきましてありがとうございます。
おかげさまで、リフトアップしてから6日目で新しいタイヤを試すことが出来ました。
休日や食事時間返上で作業に当たっていただいたものかと思います。
改めて感謝いたします。
アルフェッタ1800GTが私の元に来た時には、純正サイズの185/70 14に対し、BSのコンフォート系タイヤの195/70 14と言うオーバーサイズのタイヤが装着されていました。
'70年代のシャシバランスを追求した車両にオーバーサイズのタイヤは好ましくなかったので、純正サイズのタイヤを探したのですが選択肢がほとんど見付かりませんでした。
イタリア車にはイタリアブランドのピレリを選びたいところですが、当時のP6は当然あるわけがなく、新世代P6にも適合サイズはありませんでした。
同じラテン系ブランドであるミシュランからリリースされている、クラシックカータイヤを検索したのですが、XAS、XVS、XWXの中には適合するサイズはありません。
次善の策として、現行ミシュランからサイズの適合するエナジーセイバー+をチョイスすることになりました。
実際にタイヤを手にして、タイヤ幅185以下の太いストレートグルーブ中心のパターンを見た時には、時代背景的にあまりにもミスマッチなルックスで正直ちょっとショックを受けました。
エナジーセイバーは、足回りを強化ダンパーなどである程度固めたハイパフォーマンスのFF車に装着した場合、スポーツタイヤかと確認してしまうほどに優れた操縦性と乗り心地が両立しているため、ただ単に転がり抵抗軽減を狙った物では無く優れた潜在能力を持っているものと確信していますが、アルフェッタ1800GTにはルックス以上にミスマッチを感じる操縦性になってしまいました。
郊外のなだらかな道を車の流れに添って走ったり高速道路を軽く流したりする分には、転がり抵抗の少なさとそれに相反する乗り心地の良さを十分に感じ取ることが出来ますが、高速コーナーでちょっとアクセルを開けたり、タイトコーナーを素早く立ち上がろうとする際に、クリッピングポイントを今ひとつ定められなかったり、理想のラインを頭に描きながらコーナリングを実現させて行く感覚に乏しいものを感じました。
特にコーナリングスピードの上昇に従い二次曲線的に操舵力を必要とし、その割りにグリップ感が得られず一定舵角の保持にも不安を感じるような有様には全くもって期待外れです。
これは単にグリップ不足だとかアンダーが強いと言った物では無く、何となく“これじゃない感”が付きまとうと言った類のことでしょうか?
ハイパフォーマンスFF車での好ましい特性と比べてしまうと、「同種のタイヤなのにこの違いはなぜ?」と言いたくなってしまいます。
好みとは異なるタイヤパターンに起因する、単なるプラシーボ(この場合はノーシーボかな?)効果かも知れませんね。
そんな中、より理想に近いタイヤはないものかと思案していたところ、村上タイヤさんのブログの中でピレリのクラシックカータイヤの情報を発見しました。
何度かのやり取りの中で、クラシックポルシェによるタイヤテストの情報の提供を受け、「もうこれしかない!」と言う感じで取り寄せを依頼する運びに至りました。
タイヤ交換に当たっては、主に2つの理由からホイールを送って村上タイヤさんにて組み込みをお願いすることにしました。
一つ目は、アルファ純正のカンパニョーロ製のマグホイールに無理な力をかけない丁寧な仕事を期待できること。
これはルーティーンのタイヤ交換だけでは得られない多くの経験がものを言いますからとても大切なポイントです
二つ目は、オプトライドプログラムによる最適なホイールバランス取りで、軽量マグホイールが活かせるような理想的なウェイト配分を期待できることです。
オプトライドプログラムによるバランス取りの良さはオートバイで何度か経験しており、フレーム強度に勝るようなハイグリップタイヤでサーキットを全開走行しても、ウォブルやチャターが出にくいという安心感が絶大です。
また、経験上、ピレリタイヤの中には思いがけないほど大量のウェイトを必要とするものも存在する事を知っているためでも有り、より高度なバランス調整を期待したいためでもあります。
届いたタイヤを見て、卍崩し(紗綾形)のパターンに懐かしさを感じました。
トレッドパターンのみで無く、余計な装飾の無いサイドウォールにも好印象を持ちました。
純正タイヤのグッドイヤーG800 GRAND PRIX 70 のラーメンパターンとも、ミシュランのXWXに象徴されるような“顕微鏡で覗いた規則正しく列ぶ植物細胞”の様なパターンとも違い、時代を象徴するような規則正しい幾何学模様が最新の品質管理とテクノロジーの恩恵の元で再現されるなんて、ましてやアルフェッタと同じイタリアブランドのもとで提供されるなんてなんて素晴らしいことでしょう。
数日の雨で路面に真っ白くしみ込んだ凍結防止剤も洗い流されたため、タイヤ装着後すぐに70km程一般道を走ってみました。
コースは日常的に使うアップダウンと様々なコーナー形状を持つほぼ貸し切り山岳路で、冬場にはブラックアイスから乾燥路面まで、コーナー毎に表情を変えるまさにテストコースのような様々な条件を備えたテストにはうってつけのルートです。
タイヤのエアをF1.8、R2.0(初期伸びを考慮してそこれより2%ほど多めに入れています)に合わせた後、まず最初に車をリフトから降ろして感じたことはステアリングの軽さです。
アルフェッタのステアリングは、太ももと干渉することを嫌い純正のφ40cmのステアリングからφ37cmのナルディーに交換しています。
転がり抵抗が少ないエナジーセイバー+から、よりグリップ力のあるCN36に交換することでステアリング操作は重くなるものと確信していましたので、手元にはφ39cmとφ40cmの2本のステアリングを準備して、何時でも交換出来るような体制で試乗を開始しましたが全くの杞憂に終わりました。
私は据え切りの習慣はありませんのでタイヤがほんの少しずつころがっている状態での事ですが、自然な手応えを伴いながら軽くステアリング操作ができます。
基本押し回しで、親指ではリングを握らず立てて縁に添わせるスタイルですが、パーキングスピードでも大きな力は必要ありませんでした。
山岳炉に入って一つ目のコーナーでタイヤの素性の良さがわかりました。
コーナリング中に操舵力の変化が少なく、操作の妨げになる様な不自然な手応えも感じません。
トレッド面のペイントと離型剤が落ちた頃合いを見て徐々にペースアップしてみましたが、最初に感じた良さもペースと同じように向上して行きます。
大小様々なコーナーでもクリッピングポイントを取りやすく、そこから徐々にアクセルを開けていっても保舵力を増す必要も無くクロソイドに添って綺麗に立ち上がって行きます。
確実にタイヤのグリップが上がっているのに操舵力が軽く感じるのは全くの予想外で、大径ステアリングの必要は全く感じませんでした。
強めの横Gが掛かっている状態で路面のギャップを拾い、車が横っ飛びするようなシーンでも素直な挙動に変化はありません。
無理にタイヤをこじっていないので急にステアリングが切れ込んだり、接地の回復によってラインが乱れたりすることもありません。
アルファツインカムの鼓動を感じながら正確なステアリング操作で車を走らせることが楽しくてたまらない感じです。
ちょっと様子見で試乗のつもりでしたがもっと沢山走りたい欲望に負けそうです。
しかし、山に近付くにつれて路面にしみ込んだ凍結防止剤の白さが気になるようになり嫌でも現実に引き戻されました。
帰路も同じルートでしたが、全体的に登り基調になるので少しパワーをかけペースアップして戻りました。
タイヤが揉まれたことで走り始めよりもしなやかさが向上しているような印象もあります。
帰宅後の車庫入れでもパーキングスピードにおける操作性の軽さを再確認することが出来、CN36を一層好きになりました。
正直に言えば、サイズの同じタイヤでこんなに操縦感覚が変わるとは思ってもいませんでした。
あくまでも“時代に合ったルックス”を重視したタイヤのチョイスでしたが、思いがけない操作感のアップに喜びを隠せません。
これを書いている今、外は激しく雨が降っています。
この雨で高速道路上にしみ込んだ凍結防止剤が洗い流されることを期待します。
天候が回復すれば、週末は高速走行テストをしてみたいと思います。
村上タイヤさんのおかげでまた今回も理想のタイヤを手に入れる事が出来ました。
ありがとうございました。