村上タイヤ様
いつもHP楽しく読ませて頂いております.私の住居が東海地方で御社までなかなか訪問できないのは寂しい限りです.さて,先日御社のHPを参考にダンロップのSP9000をシルビアに履かせてみました.そのタイヤインプレッションを送りますので,よろしければHPの足しにしてください.
運転歴は20年近くなり雪道で数年運転した経験もある,峠や首都高責めを卒業した中年爆走族です.いすゞジェミニからずっとFR党である.シルビアは先代からの付き合いで,車体剛性が高く比較的重量は軽い.先代に対しパワーアップした分サス全体の剛性感も上がった,その分乗り心地は悪い.現在交換後3000
kmを越え,HP情報提供への感謝の意を込め,RE711とSP9000を比較しながらインプレッションします.納車時に装着されていたタイヤは,降雨時のハンドリングや制動姿勢,最大トルクで駆動した時の挙動不振が目立ち,即RE711に交換.距離を重ねの交換時期が到来したためタイヤ選びを開始.このHPの情報を参考とさせて頂き,ヨコハマNEOVA,ダンロップSP9000,ミシュランPilot
Sportを候補と選択した.RE711の最終的な印象が悪かったためブリジストンは対象から外した.ピレリもP7000を候補としたかったが情報不足のため断念した.タイヤ専門店を回り,最後に辿り着いた近所の昔からあるタイヤ屋で静かで十分な性能があると勧められたダンロップSP9000に決定した.
#選択動機#
RE711は,当時最高というブランドイメージのみで選択.制動や旋回時のグリップ力は強力,しかし中高速コーナー出口やタイトな旋回で後輪が「ひっかかる」イメージを感じ,サスペンションの調整を視野に改良方法を考案していたが資金がかかること居住性が最悪になることから断念.パターンの剥れには至らなかったがトレッド面パターン部にクラックを見つけたこと(注1),「効きゴム」が出てきたら性格が大きく変わったこと(注2)から交換を決意.SP9000は,高速道路走行が多く,車重の重い車種にも採用されているから堅牢性は高いスポーツタイヤと想像して選択.最初に現物を見たときラウンドショルダーと独特なパターントレッドで頼りない印象で失望,一時は失敗したと感じた.
#低速−中速走行#
法定速度範囲内から+α程度までは,両タイヤとも剛性間とグリップ力に差を感じない.右左折やタイトコーナーで乱暴なアクセルワークをすると後輪から発するスキール音は同じ.降雨時のグリップも,急制動の感触も同じ.SP9000のあっさり感に対し,RE711のハンドリングは若干の粘りを感じ,顕著に轍に舵を取られる.剛性は,
RE711は硬いコンニャク,SP9000は硬い鞠に乗った感じで,パターンノイズは比較にならない程SP9000は静か,路面情報の感触と乗り心地は同等.SP9000は砂利を良く拾う.
#高速走行#
法定速度の1.5倍以上から差が徐々に出る.RE711は前輪も駆動輪もラインをキープする力が極めて強力であり,トルクを掛けた時の後輪の挙動は引っかかりを感じる程である.SP9000は,ハンドル舵角がニュートラル付近では軽いアンダーを感じるが,旋回外側に加重された時のグリップはRE711と遜色ない程度.RE711と同じラインを描くには,ちょっと早めの先行動作的切込みで軽いアンダーと共に旋回外側へ荷重すればよく,リアタイヤはタイヤ半分外側を通る感じとなる.降雨時性能,フルパワー発進時の挙動,急制動時の車体挙動,制動距離での制動ともに両者に差は無いがコンニャクと鞠の感触は同じ.グリップの一定しない荒れた路面ではSP9000の安定性が好印象である.なお,SP9000の感触はトレッド表面を指で触るとネットリするまで暖めた後のもので,温まる前は滑り出しが早い.
#番外編#
燃費はSP9000に分があると思われたが,結局変わらない.SP9000の乗り心地は期待外れだが,タイヤの性能を考えれば切り捨てられる.排気音が五月蝿い(注3)がタイヤ騒音の改善は十分認められ,長距離高速走行の多い私には疲労軽減という最も有難い性能となった.
ABSカット時の高速急制動での安定性,6速全開走行時の直進安定性は,SP9000の感触が良好.タイトコーナーでのパワードリフトはどちらでも可能だが,RE711の粘る腰と強力なグリップで軽快感はない.逆の表現をすればRE711はどんな状態でもグリップでアクセルを踏み込める.
RE711は粘つく感じがあり,滑り出し速度も高いから難度が高い.限界ウエット性能でのRE711は,特有の粘りが抑えられ以外に好感触.
SP9000は意外と素直な限界付近の挙動で扱い易い.グリップ許容速度旋回時に更にトルクを掛けるとSP9000の方がRE711より滑り出しが早い.高速コーナー300R(注4)を定速で旋回した場合,両者とも140
km/hrまではほぼ同じラインを通り,160 km/hr でSP9000は後輪がタイヤ一本分外側にずれる.RE711だと旋回後半の後駆動輪へのトルク負荷時には,サスペンションの許容量の限界までグリップして,ひっかかると感じてしまうほどである.回頭性は,RE711はハンドリングで得られるに対し,アクセルワークや加重など全体で演出するSP9000という印象である.
#総評#
スポーツ走行時のコーナー進入ではアンダー,脱出加速に向けてオーバーという特性がFRらしいと考え,タイヤを選んだ.
RE711はヨコハマNEOVAと同様に,タイムアップを狙う方に適当だと思うが,ノーマルサスでシルビアを楽しもうと思ったらノーマルサイズのSP9000という選択肢もあると考えた.荷重と舵角の調整を適当に行えば結構アクセルは踏み込め,快適居住性は低いが走行安定性が高く騒音も控えめというバランスのタイヤである.
注1:購入を目指しタイヤ屋巡りをした際に店員から指摘さる.どのような状況で発生したか不明.
注2:山はまだあるが,騒音が増し,ハンドル舵角ニュートラル付近の鋭敏さが鈍ったように思う.
注3:拳骨が入る車検対応マフラー,サイレンサー付きだが,アイドリング意外は結構良い音.
注4:目安として,東名高速道路の箱根の峠の下り線右ルートは制限速度が80 km/hr に設定されているが,そこで一番きついカーブが300R.
補足:NEOVAやRE711のようなハイグリップタイヤは剛性が高いため,車体とサスの設計がスポーツ走行を想定した車以外に装着すると想定横Gを超え,車体やサスの限界がタイヤの限界より早く招来する.SP9000にもその傾向はある.その結果,トレッド面を路面に押し付けられずに不安定な縦横ずれを不規則に繰り返す現象が起きる.車種やサスペンション改造程度で,同じタイヤでも違った印象が語られる大きな原因である.スポーツ走行を標榜する車は多いが,足回りが意外とプアである車種も多い.最近よく見かける普通のセダンやバンなどでタイヤ幅を広げた場合の挙動はもっと深刻な状況となり危険である.
メーカーや販売店の商業主義に振り回された消費者が可哀相であり、無理するオーナーも多く危険性が高い。車体の性能や自分の運転能力の欠落をタイヤの性能と混同しないよう注意すべきではないだろうか。
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