村上タイヤ様
いつも貴HPを楽しく拝見させて頂いております。先日は一度目の感情的な投稿、それに度々のメール交換、失礼いたしました。
タイヤ選びにおいて貴HPの情報はこの上なく参考になりました。お礼にはなりませんが、僭越ながら、当方のタイヤ購入記が少しでもお役に立つ場面がある
なら、と懲りずに再び投稿させて頂きます。
新車の装着タイヤをほぼ乗り潰し、久々のタイヤ購入でした。貴HPの情報を参照し、知人や数軒のタイヤ店でも話を聞きましたが、実際にミシュランプライマシーを買って履いてみ
て、最初は何とも言えぬ違和感を拭えずにいました。後悔し、無理に自分を納得させようとしていたところもあります。しかしその印象は、最初の
1500kmほどまで。2000kmを越えるあたりから、乗る度に印象は好転し、改善し続けています。「購入当初は『失敗したかな』と思っても、走り込
むうちに印象が少しずつ変わることもある、という一例になる」と村上様よりご指摘を頂戴いたしましたが、(特にミシュランなので)その通りだと思われま
す。これから同種のタイヤを買おうとお思いの方のご参考になればと願っています。
なお、プライマシーの評価は、新車装着のダンロップがその評価の基準と申しますか、立つ位置になっていることをお断り申しておきます。
今回最後まで購入候補として迷ったのは、
1.ダンロップ VEURO VE302
2.ミシュラン パイロット プレセダ
3.ヨコハマ DNA dB EURO
このあたりです。新車装着のダンロップは、山は十分あったものの硬化が進み、悪路で「内蔵まで揺すられるような」振動が出始めており、これをなんとかす
るのが第一の狙いでした。しかし操縦安定性などが大きく損なわれては元も子もありません。第一の目標を達成しながら、恐らくトレードオフで低下する操縦
安定性などをどの高さまで要求するかという、バランス点を探る半月がかりの研究でした。目的を考えれば、本当はインチダウンしたかったくらいですが、予
算に限りがありましたので。
ダンロップVEURO
VE302は本命の一つでした。しかしタイヤ自体の重さが乗り味にどう影響するのかやや不安でしたし、新しいためインプレッションがありませんでしたの
で尻込みしてしまいました。
ヨコハマのDNA dB
EUROも、ケブラー使用の軽量タイヤで、「1クラス上のタイヤだよ」とヨコハマに強い某タイヤ店の親父さんがお薦めしていました。昔履いたDNA
GPも悪くない印象でしたし、dB EUROはそれよりもう少しコンフォート性能も高いようなので良さそうに思われました。
しかしミシュランやピレリは、元々構造的に軽くて路面への追従性も良い、と他の方々のコメントで拝見し、単純にその事実に説得力を感じていました。実は
私は一昔前仏車党でしたし、やはりタイヤはミシュランかな、と肩入れするところもありました。
価格的には一段安く魅力的だったプレセダですが、コンフォート寄りの「スポーツタイヤ」とスポーツ寄りの「コンフォートタイヤ」なら、ミシュランのうち
前者がプレセダ、後者がプライマシーのように思われました。話を聞いた知人やタイヤ屋さんもおおむねそのような理解でしたし、ミシュランのカタログ上で
もそのような紹介の仕方でした。そのため、第一の目的を達成するためには、モデル的には旧いことはわかっていたのですが、プライマシーなのかな…と決ま
りました。ちなみに新しいプライマシーHPは、純正タイヤのサイズでは発売されておりません(これは痛かったです)。
前置きが長くなりましたが、以下実際にプライマシーを履いてみた印象です。使用済み古タイヤとの比較では意味がないというご意見もわかりますが、タイヤ
の性質が違えば、単純に新タイヤの方が全ての特性で優れているわけではありません。その特性把握と、投資して得られたもの、ある特性を伸ばすためにト
レードオフで失ったものの確認という観点でお考え頂ければと思います。
(抽象的ですが◎優、○良、△可、×不可 で評価させて頂きます)
■レスポンス・・・・・・△ SP8090>>プライマシー
後述のように乗り心地や直進時の安定性に振ってあるらしく、ハンドルのセンター付近が若干ダルと申しますか、スローです。わずかに捩じれを感じ、舵角も
わずかに多く必要な気がします。左右の切り返しでも一瞬ですがグラッとくる空白があります。ただしこの点は、長距離を高速で走る際には逆に○になること
もあり、何を優先するかによって評価は変わります。少なくとも安物に多い、真っすぐ走るのにもふらついて常に修正舵が要るタイヤではなく、直進時の微舵
もちゃんと効きます。一方ダンロップSP8090は、レスポンスに関しては遥かに繊細かつリニアでビシッとしており、○か◎が付けられるスポーツ寄りの
タイヤでした。
■静粛性・・・・・・・・△ SP8090>プライマシー
厳しめの評価も「コンフォートタイヤ」としては、という意味です。良路では文句なく静粛=パターンノイズ自体はほとんどないのですが、舗装が荒れている
道路や、荒い透水性舗装の道路では、遮音のみに関してですが、3万km走ってくたびれたダンロップより当初悪化したような気がしました。「ゴー」という
音に、「フォー」という共鳴音が混じります。ロードノイズ=道路側に起因するノイズの遮断はさほど得意ではありません。よく利用する「高速国道」ではこ
うした舗装が多く、車内での会話にやや支障が出ました。しかしもしかすると、平らな路面での静粛性が上がって、相対的にうるさく感じているということな
のかもしれません。ロードノイズは現在日に日に気にならなくなってきてはいます。またアテンザの5ドアは、角度の寝たハッチゲートが太鼓の皮の役割を
し、路面のノイズを増幅して、ただでさえ「ボンボン」という派手なドラミング音が鼓膜を刺激するのが大きな欠点ですが、これが評価を難しくしているかも
知れません。この上ロードノイズが増幅すれば、せっかくのプライマシーの長所も評価を下げざるを得ませんが、これは車の側にも責任があります。ただ同じ
車に履いての印象であることには違いありません。
カタログでも静粛性評価は5ポイント中の3で、4になっているプレセダより劣るのかと気になり、随分迷いました。皆様のインプレッションを拝読したとこ
ろ、結局新しいプレセダPP2の方が静かなのでしょうか?
■直進性・・・・・・・・◎ プライマシー>SP8090
かなりいい部類かと思われます。タイヤが自ら真っすぐ走ろうとする印象です。SP8090も劣らぬくらい直進性は優秀でしたが、やや外乱による影響が出
てきていました。
■ドライグリップ・・・・○ プライマシー>=SP8090
峠派/サーキット派の方に薦められる質ではないものの、実際には結構グリップはあるほうだと思います。国産タイヤには見られない、もっちりとソフトに路
面を掴む独特のグリップ感と乗り味です。スキール音が出るのは早めですが、ミシュランは伝統的に、絶対的なグリップ力よりも、鳴き出してからブレイクす
るまでの特性や路面情報の把握、コントロール性に重点を置いているはずです。私もそこを評価していますので、個人的にはグリップ力そのものはあまり問題
にしていません。タイヤだけで勝手に限界まで頑張った挙げ句、最後で唐突にブレイクなどというタイヤもあるようですが、今の私の車と走り方には不釣り合
いです。またブレーキグリップとトラクション性能について申せば、私の乗り方では全く文句なしです。
■ウエットグリップ・・・○ プライマシー>SP8090
くたびれたダンロップはこれも危険域に入っていました。もちろんプライマシーは全く問題なく、カタログの文言通り排水性も良好のようです。
■乗り心地・・・・・・・○ プライマシー>SP8090
突き上げ感や揺すられ感はかなり減少し、明確にフラット感が増しました。角の取れたしなやかな乗り心地で、小さな凹凸は舐めるように吸収し、軽くいなし
てくれます。トレッド面も、指で押してみた感じですが、初めは特に柔らかく感じました(砂利がトレッド面によく引っ付きました)。薄いゴムのカーペット
の上を走っているような、プジョー306のネコ脚+旧MXVの時のあの感触が若干甦り、どこか懐かしく感じます。しかし17インチで45%扁平のこのホ
イールは、私の用途と今の車にとっては過剰で、路面への追従性が良いらしいミシュランと言えど、この項目でタイヤ単体での改善には限界があります。
■総合評価・・・・・・・○
荒い路面でやかましかったため、初めは「失敗した!」と思いました。しかし乗り心地と静粛性は、2000kmを越えた今では乗る度に改善を感じ、短所よ
り長所を感じる場面が増えてきました。
当初、よもやくたびれたタイヤよりノイズが増加する場面があるとは夢にも思いませんでした。これでは「コンフォート」とか「ラグジュアリー」を謳うタイ
ヤとしては失格ではないか?と初めは思いました。「スポーツ」部門に入っているタイヤ(以前はそうだったという噂もお見受けしますが)なら少しレスポン
スが物足らないでしょうし、路面のインフォメーションはよく伝わってくるのですが、ノイズのピークレベルはもっと下げてほしい気もします。装着当初の私
の個人的評価としては、「何を狙ったのかよく分からない、古臭く中途半端なタイヤ」に過ぎませんでした。
しかし一皮むけて、騒音や乗り心地が落ち着いてきた今では、これは「グランドツーリング」(?)を目的としたタイヤなのかなと思えてきました。センター
付近のレスポンスの鈍さ/スローさと、角の取れた乗り心地は、長距離での疲労を確実に軽減してくれました。往復300kmの帰りでも、「あれ、もうこん
なところまで来たの?」とか「あれ、もう家に着いちゃったよ」という不思議な感覚です。
めくるめく速さでタイトなワインディングを駆け抜け、アクセルを床まで踏み抜いて他の車をぶっちぎる…こういうスプリント的な走り方には不向きですが、
その代わり、高速で延々と長距離を走る「巡航性能」という点では、評価できるものがあります。チョロチョロと短距離を走っていただけではわかりませんで
したが、これがミシュランの考える、「ヨーロッパ的コンフォートスポーツ」タイヤなのかな、と思いました。
言い換えれば、プライマシーの持ち味は、ロードノイズの遮断やレスポンスはさほど要求しない代わりに、角の取れた乗り心地や直進性を重視し、そして許容
ぎりぎりまでダルく、それでいてリニアさとの両立を目指したハンドリングにあると思われます。
今回は新車装着タイヤがどういう特性かわからなかったため、結局「一度カタログモデルを買ってみないと評価軸を持てない」ということがわかりました。そ
の評価軸を得るための今回の授業料でもあったのですが、今はトータルで目標に近いタイヤを選べ、正解だったかな、と溜飲を下げ、満足しております。
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