タイヤ業界で20年以上勤めました。 商工ローンまがいの仕事を懺悔
まるで取立屋
私は高校を卒業して二十年以上有名なタイヤメーカーの系列販売会社に勤務しています。昨年末に厳しい取立や詐欺紛いの保証人設定で商工ローンの大手二社が社会的に問題になっていましたが、恥ずかしながら私の仕事も、似たような内容でした。リストラの対象となって閑職に追いやられた今、懺悔の意味を含めて告白いたします。
皆様の身の回りのタイヤ屋さんで、こういうお店はご存じないですか。以前は薄汚れた普通の外観だったのが、ある日突然リフレッシュされ看板も外装もメーカー色が濃くなり、名前も変わったお店を。
こういうお店を数多く作るのが私の仕事でした。一見何の変哲もない改装のように見えて
実は汚い手口が隠されています。
一部始終をお話しましょう。
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ウチのタイヤを主に買ってもらっていて、商売は長く続けていて、外観もパッとしないタイヤ屋さんをターゲットにします。「このままでは時代の流れに残されますよ。00というのをご存じですね。ウチのメーカーが全国的に進めている小売店の系列です。これに入りませんか。統一した看板、雑誌広告での知名度アップなど良いことずくめですよ。」と誘うのが第一歩です。
多くのタイヤ屋さんは、この誘いにすぐには乗りません。何て言うか「小さくても俺の店だ」という気持ちが強いようです。それを覆す殺し文句は「嫌ならウチの会社が直営で出店しますよ。スグ近くに」
というもの。こう言うと「脅すつもりか」とくってかかる人もいますが、態度を変えて話に乗って来ます。
それからは数ヶ月から一年ぐらいで大規模な改装に取りかかります。
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改装オープンには会社を挙げてそこを応援します。ラジオCM、チラシ、そして社員を送り込み旗を振ったり、商談をさせたり、作業をさせたり。オープニングキャンペーンの数週間の中には、一日の売り上げが
150万円を越えることもあります。それまで一ヶ月の売り上げが300万とか500万ぐらいの規模だったお店にしてみれば、経験したことのない金額でおおいに喜ぶ訳です。
オープニング時の盛況は一過性のもので、真価を問われるのは数ヶ月経ってからです。その頃には普通の忙しさに落ち着いてます。となるとウチからのその店への納入量、納入金額が減ってしまう。
担当営業マンに「もっと買ってもらわなければ困りますねぇ」と売り込みをさせると、「そう無理して仕入れはできない。」と言われます。当然です。オープニング時はバブルのようなものですし、それが去った時期は相応な仕入れをするのは当たり前。
ウチの手口は、その当たり前を許さない。 「はぁ、いったいどれだけ協力したかわかっているのか?」と恫喝。「営業所も数字出すのに必死なんだよ。」と欲しくもないタイヤを押しつける。翌月もその翌月も同じように。押しつけられたツケは数ヶ月に回って来ます。
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賢明な皆様はもうお気付きでしょう。 商工ローン会社が返済をさせずに、どんどん貸し出し金額を増やすのと同じ。仕入れした分を支払い出来ないのを承知で、どんどん買わせます。支払い不能な分は棚上げしてやると同時に出向というカタチで社員も送り込む。この時点で実質的にその店は、ウチの会社の所有。出向で送った社員がトップに立ち、元々の経営者は部下のような立場になる。
さらに追い打ちを掛けるように、二号店、三号店を出店させる。こうなれば「乗っ取り」は成功です。
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このようにして、タイヤ屋さんを泣かせて しかしながらウチの会社は業績を伸ばした。その渦中にいるときは、自分自身に誇りすら持っていました。今振り返ると下劣な仕事でした。
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