ピレリについて知ってもらいたいこと!
「村上タイヤon the Web」の読者の皆様、はじめまして。私はピーアンドエー株式会社の業務・企画本部
商品企画課の市川 仁と申します。ちなみにピーアンドエーとは、99年から日本におけるピレリタイヤの輸入発売元として、98年までピレリタイヤの輸入代理店であった阿部商会とピレリ社が合弁で設立した会社です。私は商品企画や新車(特にヨーロッパ車)に装着されているピレリタイヤに関しての仕事をしています。最近、自動車雑誌によく書かれない(笑)当社のタイヤを少しでも理解してもらいたいと思い、こういう場に登場しました。
実はタイヤメーカーの間でもここのホームページは結構話題になっています。村上さんの考えや、一般の消費者の方のタイヤに対する思いがわかる貴重な情報源として認知されています。タイヤメーカー側の立場から反論したい方もたくさんいると聞いています。特に「インプレッション」などで悪く書かれた場合には。とはいってもサラリーマンの立場ゆえにこういう場に出てくるのは遠慮しているようです。ここで変なことを発言し上司に睨まれては何の得にもなりませんし。
幸いにも当社は前述のように新しい会社で、傳田社長の理解もあり遠慮せず堂々と発言いたします。単に自動車雑誌の記事に対する反論だけでなく、この機会にピレリに関する理解を深めてもらえる内容を書かせてもらいます。村上さん宛てのメールで問い合わせ、疑問が多いP5000
DRAGOの価格についても説明いたします。
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大きく分けて次の4つの項目を、皆様にご理解頂けたらと思います。
●日本のハイグリップタイヤとどう違うか?
●P6000のHRタイヤは性能的に不十分か?
●P5000DRAGOが安すぎるという不安に対する説明。
●純正装着されている、ピレリについて。
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●日本のハイグリップタイヤとどう違うか?
「ピレリもP7の頃は図抜けて高性能だったけど、最近は日本のタイヤも性能が上がって、すっかり抜かれちゃっている。」などと耳にします。70年代にP7が登場した頃を知る、ある一定以上の年齢の方(特にジャーナリスト)の間では特にこう思われているようです。逆に、一部の若い年齢層の方にとっても「高性能タイヤ=日本のハイグリップタイヤ」という図式を持たれているようで残念です。確かに、誕生当時のP7は他のタイヤに対して圧倒的な性能のアドバンテージを誇ってました。何しろある時期までは、比較しようにも同じ土俵で比らべられる扁平タイヤが他メーカーに存在しませんでしたから。その後、今日に至るまで各タイヤメーカーが独自に扁平タイヤ(以後ハイパフォーマンスを略したHPタイヤと書きます)を次々と発売しました。とりわけ日本メーカーの「ハイグリップタイヤ」と称されるものがHPタイヤの代名詞のごとく認知されております。
この間、ピレリ社とて新しいHPタイヤの開発や市場への投入を怠っておりません。P7の成功にあぐらをかき、安穏としていたわけではないんです。P7はP700ZからP7000へと進化し、その上に位置するウルトラハイパフォーマンス(以後UHPタイヤと書きます)たるP-ZEROを発表しました。反対に買いやすい価格体系のP5000
VIZZOLA、それが進化したP5000 DRAGO などを市場に送っています。
ピレリ社が一貫して貫いて来たコンセプトは「コントロールが効かなければパワーは無意味」というものです。刻々と変化する可能性がある公道での走行に「ゆとり」を与える道具としてのタイヤを提供して来ました。多くの消費者にとって、いたずらにドライ時のグリップが高いだけのタイヤより、ウエット時も優れた性能を保ちコントローラブルなタイヤの方が使うメリットがあるだろうと考えているからです。頂点のP-ZEROとてシリカとカーボンブラックの合成ポリマーによる独自のコンパウンドでウエットグリップを向上させています。
買いやすい価格帯のP5000 DRAGOなどはまさしく、コンフォートとウエット性能(すなわち安全性)を追求した商品です。ですから価格帯の接近したP5000
DRAGOと国産ハイグリップタイヤを比較して「P5000 DRAGOはグリップが悪い」と判断するのは無意味なことです。
実はピレリ社にも、P-ZERO Cという「確実にタイムを縮める超ハイグリップ、サーキット走行派の極限の走りに対応しながらも最低限の耐用性を確保。一般路走行も可能な」タイヤが存在します。これであれば、日本のハイグリップタイヤと「グリップ」という観点から比較しても遜色ないでしょう。しかし、こういうタイヤの要望は非常に限られている為、サイズバリエーションも限定されておりますが、
P-ZERO Cのようなタイヤを求めるお客の層も多いのであれば、日本車適応サイズを増やすなり何らかの対応を検討したいと思います。
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●P6000のHRタイヤは性能的に不十分か?
メルセデスのE320アヴァンギャルドにかなり高い比率で、P6000 215/55HR16が装着されています。このHRタイヤが装着するにふさわしくないという、一部マスコミの論調に対して私見を述べます。
確かにこの車はヨーロッパではVRなりWRなりのタイヤが標準装着のようです。とは言っても私の立場から「絶対にVRやWRタイヤを付けるべき」と言う気持ちはありません。というのも、このHRタイヤを選んだのはピレリではなく自動車メーカーたるダイムラークライスラー社でありそこには何らかの背景があったと想像されるからです。日本の道路事情やオーナーの運転状況を考慮してHRタイヤが選ばれたのかと思います。あるいは日本でベンツを売るディーラーやディーラーの声が集約されるインポーターの希望が多少は反映されているのかもしれません。最終的にはダイムラークライスラー社の選択であり、オーナー像から不満のでない最大公約数としてのタイヤであると思います。
かといって新車装着のHRタイヤが摩耗した場合、次も絶対HRタイヤを付けろとは言いません。仮に215/55R16のままで、P6000のWRに換えればより満足を得られるオーナーもいるでしょう。
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●P5000 DRAGOが安すぎるという不安に対する説明。
P5000DRAGOの市場価格について、村上さん宛のメールをいくつか拝見いたしました。「安いのは歓迎するも、安かろう悪かろうでは?」と危惧されている方も多いと知りました。
これは誤解で実際には「値段の割には高性能」なタイヤです。
この誤解を解くのは簡単で、要するに「新車装着を前提とせず、今や世界的にも安いレベルになりつつある日本での市場価格を考慮して」生産している背景があります。自動車メーカーが要求する諸条件をクリアする必要がなく、ピレリ主導で開発した結果でもあります。仮にドラゴが新車装着を前提としていれば、独自の太いセンターグルーブも「奇抜すぎる」という理由で自動車メーカーに受け入れられずに修正していたかも知れません。当然修正にはコストがかかります。
そういうコストが掛からない故に「買いやすい」値段で販売が可能で、思い切った価格政策を引いてます。日本の市場で「一般消費者向けタイヤ」と認知されている多くの人気商品に対抗するためには、価格がかけ離れていては受け入れられません。
ただ本音を言えば、いかに新車装着を前提にしないが故の生産コストとはいえ現状の販売価格では「利益」の面ではかなり厳しいものがあります(笑)。しかし「高いからピレリは嫌ダ」と言われない為に、買いやすい価格体系を維持して多くの方にピレリの良さを知ってもらえる存在と位置づけています。
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●純正装着されている、ピレリについて。
多くの輸入車にピレリタイヤが純正で装着されています。「タイヤが減って、同じくピレリを付ける」という需要が発生し、あるいは「新車装着されていることによってピレリというタイヤを知った」人も多いでしょうし、この事自体は歓迎し誇りに思っています。
しかし一部の心ない輸入車ディーラーがピレリを「悪者」扱いし、責任を転嫁している事実は嘆かわしいことです。「クレーム」と称して何でもピレリタイヤのせいにするケースも見受けられます。例えば明らかに外傷によるサイドカット、平たく言えばタイヤを何かにこすり付けた結果でタイヤが損傷した場合でも「これはタイヤが悪いです」と軽率にお客さんに言って、後々収拾が付かなくなります。
特に50や45といった扁平タイヤではサイド部分が薄く、ファミレスの出入り、歩道の乗り上げ、立体駐車場の出し入れ、で損傷することがあります。仮に乗り手が扁平タイヤを装着している自覚があれば、防げることもありますが、単に「高いグレード買ったら、そういうタイヤが付いていた」場合が厄介です。本来であればディーラーが新車を納車するときに一言でも注意を喚起すれば随分違うと思います。
「偏摩耗」や「ハンドル振れ」「クルマが左に流れる」多くの問題でも「タイヤが悪い」と断罪されています。ピレリ装着の某輸入車ではエア洩れが続出し「なんじゃピレリは」と非難されたものの、詳しく調べるとバルブの根本(ホイルとの接点)から洩れていた例もありました。
あらゆる工業生産物で完璧は存在しません。ピレリの商品も数多く生産する中には、不具合な商品も発生します。この様な場合には迅速に対処するよう努力しておりますが、タイヤに関するトラブルの多くは使用上の問題に起因している頻度が高い事もご理解頂きたいと思います。
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最後になりましたが、今回ここに書かせていただいたことで少しでもピレリタイヤを理解してもらい販売に結びつけば幸いです。ご意見などがありましたら村上さん宛にメールを下さい。返事を書くのは時間的に無理かと思いますが、すべてに目を通して今後のピレリタイヤ販売の参考にいたします。
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